第3章

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 とりあえず喰ったものの、たった1匹では腹の足しにもならない。それにこいつはエサだ。 本命は魚だ。喰ってしまえば魚を釣ることはできない。 しばらく待つと魚がかかった。釣り上げると、20センチほどのフナだった。 生きているうちに喰わねばならない。釣り針からそのフナを引きちぎるようにもぎ取ると、 まだ暴れているフナをフィッシングナイフで鱗を削ぎ落とし、背びれ、胸ひれ、尾びれを切り落とした。 そのまま頭から喰らいついた。頭蓋骨は相当の硬さだった。でも飢えのほううが勝った。 オレは頭を噛み砕くと、内臓ごと肉にかぶりつく。  5分ほどで喰ってしまった。確かに飢えが和らいだ。オレはまたエサのゴカイを釣り針に付けると 糸をたらした。 その日は1日で、5匹釣れた。まずまずの釣果だ。もちろん、5匹ともすぐに喰った。 生きたままで・・・・・・。 あくる日も、そのあくる日もオレはため池に通った。確かに釣れた。 多いときなどは、大物を8匹も釣ったこともある。だんだん面倒臭くなって、鱗も落とさず ヒレもそのままで、オレはかぶりついた。口の中を骨やヒレが刺して来て、 口の中は、血だらけになったがオレは噛み砕いた。しまいには、口の中の血が、オレのものなのか それとも魚の血なのかわからなくなってきた。まあ、そんなことはどうでもいい。 空腹さえ満たせればいいんだ。  オレはいろんな魚を喰った。フナ・コイ・ハヤなど・・・・・・。 味はどれも同じだ。生臭くて血の味しかしない。でも、釣れているうちは良かった。 10日ほど通っていると、途端に釣れなくなった。まさか喰い尽くした事はないだろう。 それより、魚のほうが警戒しているんじゃないだろうか?毎日のように、仲間が姿を消していくことに 危険を察知したのかもしれない。  それでもオレは3日間、しつこくため池に通った。だがそれは徒労に終わった。 丸3日間何も喰ってないと、頭が朦朧としてきた。そろそろ次の手を考えなければならない。 他の生き物だ。生きてる奴、生きてる奴、生きてる奴・・・。 できたら魚よりでかい奴。魂はでかいほどいい。ネコや犬だったらいいなと思った。 しかし、オレの住んでいる街では、動物の管理が行き届いていて、野良猫や野良犬など、めったに見かけない。 それによしんばいたとしても、野良猫は素早くて捕まえることは不可能だろう。
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