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物心がつく前から、私は歌っていた。
小さな子供は、だいたい歌が好きなんだろうけど、私はとにかく、歌ってばかりいたらしい。
小学校では、児童合唱団。
中学校では合唱部。
そして高校生の今ももちろん、合唱部で活動している。
お父さんもお母さんも、私が並外れて歌に執着していることを心配していた。
むしろ、歌うこと自体に、あまり賛成していないみたいだった。
表だっては何も言わないけど、やっぱり感じ取れるものはあるから。
だから、高校は公立の普通科を選んだんだ。
それでも、しっかり合唱部に入ったと知って、お母さんはため息交じりに苦笑いしていたけど。
ここの合唱部は、県大会ではトップクラスで、地方大会でも常連校。
私が入学する前の年は、全国大会にまで行ったらしい。
当然、練習は厳しい。
これ、本当に文化部なの?ってくらい、体力作りもそれなりにハードだ。
私が入部した時には30人くらいいた新入部員も、最終学年に上がった時には、半分近くに減っていた。
片桐結子(かたぎりゆいこ)、17歳の春。
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