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練習が終わった頃には、空は霞んだ夕暮れの色に染まっていた。
理穂と、校門まで来た時、私は忘れ物に気づいた。
「ごめん、定期入れ、準備室に忘れてきた!」
「えー、早く取っておいでよ!」
電車の時間まで、あまり余裕がない。
「先に帰っておいて。
私、次の電車で帰るから」
ここの駅は、あまり大きくなくて、この時間帯は電車も30分に一本しかない。
この電車を逃すのは、けっこうな痛手。
「待ってるよ?」
「いいっていいって。
間に合いそうなら、私もダッシュで追いかけるから」
理穂の駅は、私の降りる駅よりも向こうになる。
私を待っていたら、帰るのが遅くなってしまう。
「じゃあ、先に行ってるね」
理穂に手を振って、私は音楽室の手前にある準備室に戻った。
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