天体観測Ⅰ

6/23
前へ
/642ページ
次へ
練習が終わった頃には、空は霞んだ夕暮れの色に染まっていた。 理穂と、校門まで来た時、私は忘れ物に気づいた。 「ごめん、定期入れ、準備室に忘れてきた!」 「えー、早く取っておいでよ!」 電車の時間まで、あまり余裕がない。 「先に帰っておいて。 私、次の電車で帰るから」 ここの駅は、あまり大きくなくて、この時間帯は電車も30分に一本しかない。 この電車を逃すのは、けっこうな痛手。 「待ってるよ?」 「いいっていいって。 間に合いそうなら、私もダッシュで追いかけるから」 理穂の駅は、私の降りる駅よりも向こうになる。 私を待っていたら、帰るのが遅くなってしまう。 「じゃあ、先に行ってるね」 理穂に手を振って、私は音楽室の手前にある準備室に戻った。
/642ページ

最初のコメントを投稿しよう!

214人が本棚に入れています
本棚に追加