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焦るあまり、ローファーを落としてしまい、勢いがついていたせいか、それは少し先に転がっていってしまった。
ああ、もう!
私が片足飛びで追いかけた時、足音が近づいた。
「あの」
とっさに片足立ちのまま、顔を上げた。
昇降口に入りこむ夕陽のせいで、逆光になったその顔は、はっきりと見えないけれど。
さっきの男子!
ますます焦って下を向いた私に、スッと差し出されたのは、我がローファーの片割れ。
「あ、ありがとっ」
と、ひったくるようにしてそれを受け取ると、私は足を入れるのももどかしく、かかとを踏んだままの状態で、その場から逃げた。
何てことだ!
恥の上塗り!
適当に歌っていたのも聞かれた可能性は大だし、焦って転がしたローファーを拾ってもらっただけじゃなく、ひったくってしまった。
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