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その旋律がとても印象的で、いつか部活でも歌ってみたいと思ってた。
だけど、さっきの男子、誰だったんだろう。
制服は来ていたから、部活で来ていたんだろうか。
運動部なら制服では活動しないから、文化部のどれか?
新2年なら、学年が違うから、会うこともないだろうけど、同じ新3年なら、嫌だなあ。
おでこの汗を軽くハンカチで押さえながら、私はそんなことを考えていた。
神様は意地悪だ。
新学期が始まり、3年2組の教室に入り、引き続き同じクラスになった理穂としゃべりながら歩いてきた時。
窓際の理穂の席の近くに、一人の男子が立っていた。
窓の外を見ていた彼は、私たちの気配に気づいたのか、くるりと振り向いた。
「あっ」
思わず、小さく叫んでしまったのは、それが春休みのローファー君だったから。
名前がわからないので、私の中で、勝手にそう呼んでいた。
彼も軽く目を見開いてから、薄く笑みらしきものを浮かべて、ちょっと頭を下げてくれた。
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