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「それって、好きだって?」
「まあ、意味は理解してないだろうけどね。よく話しかけてくるんだ。人語でも猫語でも」
好きで飼っているのだろうし、ペットに愛情を注ぐのは動物の種類に関わらずよくあることだろう。私も、飼っているミドリガメへの愛なら誰にも負けない自信がある。
「それで、毎日のように好きだって言われ続けてたらさ。そりゃ、ちょっと鬱陶しい時もあるけどさ。……好きになるじゃん」
「はあ」
「……だからぁ」
私の呆けた返事に業を煮やしたのか、ミーは大きな声で言った。
「ペットと飼い主の関係じゃなくて、恋愛対象になっちゃったの!」
「……ああ」
どうやら、一連の話は恋バナだったらしい。
「え、じゃあ飼い主をいやらしい目で見たりするってこと? うわーいやらしいー」
「いや、ミーはもう去勢されてるから……」
「あ、ミーってオスだったんだ。飼い主さんは女性?」
「うん……って、そうじゃなくて」
ミーは一息つくと、気を取り直したように言う。
「そういうわけだから、何の前触れもなく気軽にニャーンって言うのは良くないの。分かった?」
そういえば、猫語の意味について話していたのだった。思い出すと同時に、素朴な疑問が浮かぶ。
「分かったけど、じゃあなんて言って話しかければいいの? 皆がミーみたいに話せるわけじゃないし……。そもそも、なんでミーは人間の言葉が喋れるの?」
「話しかけるのは普通に人語でいいよ。あと、ミーがなんで話せるかって……、そんなの当たり前じゃん」
私が話しかけた時と同じ、怪訝な表情。そんなに簡単なことを訊いただろうか。そう思っていると。
「猫はみーんな話せるよ。普段は黙ってるだけ。それに、猫語の方が可愛いでしょ」
脳は考えようとしたが、私はすべての思考回路を断ち切った。
「確かに」
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