108人が本棚に入れています
本棚に追加
/829ページ
キュ…キュ…
まだ冬の寒さが残る曇りガラスに“彼”の名前を書く。
欠けた月から成り立ったその字…自分の中に欠けたものを埋めてくれる気がした。
今は別の、太陽のような“彼”を思い出す。
高階は窓ガラスにかいた血で曇った字を見つめた。
「リー、片付けて。」
姜は床に転がるソレを一別した
「畏まりました林杏様…いえ日本では杏璃様でしたね」
「そうね、ここは日本だもの雨も降ってきたし、早く帰りましょう」
高階の顔が、青白く暗い部屋に浮かんでいた。
最初のコメントを投稿しよう!