第1章

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 彼らがそう言う、不沈戦艦の建造計画はともかく、陸上の飛行場を起点としてその卓抜した性能をいかんなく発揮する、その機動能力からしても無敵となりつつある航空機も、洋上では陸上基地の代わりとなる母艦を持たなければその力を発揮できないというのも自明の理であったのである。それと言うのも、確かに航空機は空中を高速で自在に飛び回れるが、滑走路がなければ空中に飛び上がることも地上(した)に降りることもできない。しかも、燃料に限りがあるから長時間の空中待機はできないからなのだ。従って、非常の場合は平坦な陸地か海上に不時着するしかない。それには、当然のこと、航続距離性能が関係してくるのだ。仮に、首都東京から約六百五十海里(約千二百キロ)離れた硫黄島付近が戦場となった場合、近くに海軍の基地がなければ当然航続距離が足らず、航空機支援が行えないことになる。よしんば、予備の燃料タンクを装備して長駆戦場に到達出来たとしても、空中戦や地上攻撃に費やす時間が制限されるから、作戦半ばで引き返さざるを得なくなるのである。    かくのごとくで、ようやく念願の艦上戦闘機というものが開発されたのだが、しかし、艦上機とは名ばかりで、まだ母艦というものを持たなかったので、陸を離れると洋上を二時間半しか飛べないものだったのだ。従って、作戦が凡そ二百海里(約三百七十キロ) の範囲に限られるから、戦闘作戦時間が僅かしかなくなることになる。その点、戦闘艦艇は鈍足だが、燃料と必要物資さえ補給すれば、いくらでも航行出来る上に大量の軍事物資の積載が可能なのである。  そんなことから、尚更、水上機用の水上機母艦ではない、艦上機専用の航空母艦を必要としていたのである。云うまでもないことだが、それほど彼らは存分に戦える場を求めていたのだ。  つまり、海軍航空隊としては、洋上で活躍できる場が是非とも欲しかったから、海戦を制する為には航空機の運搬のみならず、戦場となる場所の近くから反復攻撃が行える、航空機を載せた母艦が是非とも欲しいと願っていたのである。
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