第1章

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 この艦(ふね)の大きな特徴としては、極力小さくした艦橋、起倒式の煙突、起倒式の木製デリック、二基の航空機用昇降エレベーター、二か所の航空機格納庫の他にこの艦(ふね)の為に設置されたという、米国のスペリー社製の、艦(ふね)の揺れを軽減させる為のジャイロ・スタビライザーという特殊な装置などが挙げられる。これは、艦の揺れを、十五度のものを五度まで軽減させる能力があったという。しかしながら、この装置の特質を熟知して、取り扱い方を完全にマスターするのは容易なことでなかったようで、本来の性能を存分に発揮できるようになるまでは、水兵たちの間では時化の時の食事が多少し易くなったということで、海軍に感謝するものが多くいたという程度の働きにしか用をなさなかった、と当時ことを知る者がのちに述懐していたように、その程度のものであったようだ。  また、飛行甲板の強度に間しては、薄い板張りで心細いものがあったが、鋼板を張ったりしてあまり厚くすれば、今度は重くなり過ぎてトップヘビーとなって、艦がひっくりかえる危険があり、また長過ぎればたわんで船体が真ん中から折れる虞(おそれ)があったという。  その後、英国から招聘した、航空技術専門家集団であるセンピル教育団の助言を取り入れながらの改装が行われ、のちに飛行甲板を十二メートル増すなどした他、この二年後には艦橋そのものを撤去したりもしているのである。  ここで、改めて、この、航空母艦の開発意図というものに触れてみると――  この艦(ふね)こそが、フロートを装着しない戦闘用航空機とその発着艦が可能な飛行甲板とその為の設備を備えた軍艦とを組み合わさせて、索敵や偵察よりも攻撃に重きを置き、むしろその方に特化させて、航空機の攻撃力を最大限に引き出そうとする願いが込められた、云わば、複合兵器の先駆けであったのである。
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