透明ゆえに、誰も気づかず。

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 更に俺を驚愕させ困惑させ焦らせる事態が発生する。  生きていく上で一番重要な食事。  これすらも、透明人間にとっては困難なのだ。  何故かって?  考えてもみなよ。  どんな物でも透過してしまう体では、食料を手に取ることすら出来ない。  そんな状態で、誰が人間らしい食事にありつけられるっていうんだ?  周りを見渡せば、頬が痩せこけ、地べたに座り込んでいる者。  空腹が極限にまで達した者達は、弱者を襲い、その肉を喰らう。  足元には、今まで見えなかった屍が、今まで鼻腔を刺激することもなかった異臭を放って、あちらこちらに転がっていた。  
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