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私は裏口、九凸は正面玄関から寮を出た。
裏口は正面玄関から半周回ったところにある。見事に真逆にあるのだ。
九凸の部屋からはちょっと歩くと階段、そしてすぐに正面玄関。私はといえば一度建物の中を端から端まで行って裏口へ、さらに正面玄関の前まで行くのだ。
どう考えても九凸は私より早く玄関で待ってなくちゃいけない。
というか、それが当たり前なんだけど。
「まだ来ない」
なぜか知らないが私はいま2、3分待っている。
嫌な予感しかしない。
だって歩く距離は私の4分の1だよ。明らかに私が待つなんておかしいじゃん。
私はすぐに玄関の扉を開ける。
「お、九凸。いつものお迎えじゃな」
なんとこの男、玄関で管理人のおじいちゃんと話していたのだ。
私が毎朝男を迎えに来てるなんて恥ずかしいから、わざと裏口回ってるのを気にしてほしい。
「どうも、おじいちゃん」
私は恥ずかしがりながらも会釈する。
「じゃ、行ってくるわー」
「おう。行って来い若人よ」
赤い顔になってる私を尻目に九凸は寮を出る。
「もう、九凸!」
そういって、やるせない恥ずかしさで九凸をたたいてるとおじいちゃんが笑ってみてる。
なにが若人よ!
「今日は少し冷えるらしいよ」
「しらない!」
まったくもうといいつつ九凸と歩くこと5分。
たしかに四月の終わりで少し肌寒かったけど一瞬で大学についた。
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