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「うわー。人多いなー」
大学に着くなり、九凸はうぇっとした嫌な顔をする。
まあそうなるのも無理はないと思う。
大須賀大学はいわゆるマンモス校ってやつだ。私や九凸がはいってる文学部だけでも200人は軽くいる。それに加えて経済、商学、経営学といった文型の学部がこの敷地全体にほぼ入ってるのだ。
そりゃ、たくさんの人間がここにいるのは仕方ない。
仕方ないのだが、実は私も人が多くて入学してからはとまどっていた。なんせ私達は田舎から上京した人間。
こんな人ごみを体験することなんて無いのだ。
私達はなるべくひとごみを避けつつ教室に着く。
「やれやれ。これだから外に出るの嫌なんだよねー」
席に着くとすぐに九凸が本を出しては愚痴をする。
私の横にどさっと置かれたかばんには大量の本が入っていた。タイトルを見る限りジャンルはバラバラだ。歴史もの、推理もの、ファンタジー、そしてなぜか入ってる絵本。
めんどくさいから適当に手元にあったものを入れてきたんだろう。
授業前にも本を読むなんて、こいつはある意味文学部の鑑なのかもしれない。
「いいから出なさい。じゃないとあんたすぐ家にこもるじゃない」
「まあね」
そんなはっきり言うことじゃない。
とは言いつつも、部屋にいてもただ本を読んでいるだけの男がこうして外で読むというのはいい傾向だ。
生徒達が時間ギリギリにどんどん集まってくる。大学になると私服のせいか、みんなおしゃれだ。私の横で本を読んでる男ももう少し頑張ればおしゃれなのに。
小さな学生が扉を閉めたところで、教授が授業を始めた。
大学の自由さはすごい。
最初から寝る体勢の人、携帯をいじる生徒、ノートをとる者、そして本しか読まない男。
それでも気にしない教授というのはすごいものだ。
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