第1話

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 魔王様の外見は、本当に美しい男性です。長く美しい黒い髪の毛、同じ色の瞳は闇を覗き込んでいるかのようで、ひとたび見つめたらそのまま引きこまれそうになります。  細身の体は痩せてはいますがしなやかな筋肉も備えています。背は高く、どんな服を着ても似合います。  女装しても似合うのではないかと思える顔立ちは、長い睫と高い鼻梁、赤い唇が印象的です。  しかし、そんな外見とは裏腹に、彼はとんでもない性格をしているのです。いえ、性格というわけではなく、性癖、でしょうか。 「ああ、いつ見ても美しい……」  魔王様は水晶玉の中に映る勇者の姿を見ながら、そっと吐息を漏らしました。わずかにその白い頬が赤く染まっています。そして、うっとりと見つめる瞳は、まさに恋をするもののものではありませんか。  そうなのです。  困ったことに、魔王様は恋をなさっているのです。思いっきり敵である、勇者に。しかも、それが……。 「あの両足を割り開き、私のこの猛った逸物を突っ込みたい。そして彼の喉から上がる甘い嬌声をこの耳で聞きたい。あの美しい筋肉の流れが痙攣し、彼のピー(すみません、あまりにもあれなので電子音をかけました)が私の逸物を締め上げる様を想像したら、私は、私は……!」  変態です。  間違いなく変態です。  我々の主である魔王様は、いつもこんな感じなのです。勇者の旅の様子を毎日覗いては、いつこの城にやってくるのかとどきどきしているのです。  ……勇者がもしもこの城にやってきてしまったら、どうするのでしょうか。  考えるだけ野暮というものです。おそらく、強姦するつもりなのでしょう。勇者は明らかにノーマルな性癖をしているでしょうから、かなりショックを受けると思います。できれば、このままこの城にたどり着かなければいいのに、と私は思います。そのほうが平和です。おそらく、我々にとっても、勇者にとっても。 「おう、また魔王様はあれか」  ふと、私の横に聞き慣れた声が現れました。足音は聞こえませんでした。おそらく、瞬間移動してきたのでしょう。
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