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でも。
彼が言ったあの言葉。
私が好きだと言ったあの言葉は、嘘だと思っています。絶対に、本気ではないと。なのに、どこか引っかかります。
「相変わらずだな、魔王様は」
彼がそっと笑うのを感じて、私も笑いました。
そして、彼に見つからないようにラースの横顔を盗み見ます。その直後、彼が私を見て。
私は慌てて、魔王様を見つめました。
「勇者がこないほうが平和ですよね」
ぎこちなくそう言いながら、胸のどこかがざわめくのも感じました。これが私の勘違いならいいのに。
何となく、ラースとの関係が今までと変わりそうな予感がします。
でも、絶対に、私が好きなのは魔王様なのです!
あのかた以外には誰も好きになりません。言い切れます。
それなのに。
少しだけ、ラースが隣に立っているのが心地よく感じられるのも不思議なのでした。
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