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「やっと来てくれた……」
ここに来るのはどれくらいぶりだろう?
もう来ないと心に決めてたのに。
「……なんでいんだよ」
あぁ、今日は──。
「だって、どうしても渡したかったから」
「……いらねぇよ」
俺の言葉に彼女は悲しそうに顔を歪めた。
そんな顔したって、俺は絶対受け取らない。
受け取っちゃ、ダメなんだ。
「お願い、だから……」
「嫌だ」
「ねぇ」
「嫌だっつってんだろ!?」
「それでも、受け取って?」
俺の胸にそれを押し当てられて、反射的に手にしてしまった。
ハートの形をした、バレンタインチョコ。
すると彼女はニコリと笑って「ありがとう」と言った。
「──幽霊でもいいから、ずっとそばにいろよ!」
そう叫んだのに、
もう、そこに彼女の姿は無い。
49日前、彼女はこの階段から落ちて死んだ。
俺と待ち合わせしてたのに。
このチョコを、握りしめて──。
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