第1章

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「やっと来てくれた……」 ここに来るのはどれくらいぶりだろう? もう来ないと心に決めてたのに。 「……なんでいんだよ」 あぁ、今日は──。 「だって、どうしても渡したかったから」 「……いらねぇよ」 俺の言葉に彼女は悲しそうに顔を歪めた。 そんな顔したって、俺は絶対受け取らない。 受け取っちゃ、ダメなんだ。 「お願い、だから……」 「嫌だ」 「ねぇ」 「嫌だっつってんだろ!?」 「それでも、受け取って?」 俺の胸にそれを押し当てられて、反射的に手にしてしまった。 ハートの形をした、バレンタインチョコ。 すると彼女はニコリと笑って「ありがとう」と言った。 「──幽霊でもいいから、ずっとそばにいろよ!」 そう叫んだのに、 もう、そこに彼女の姿は無い。 49日前、彼女はこの階段から落ちて死んだ。 俺と待ち合わせしてたのに。 このチョコを、握りしめて──。
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