霧がかった記憶

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一番偉い神が、ウェザブーチェンを支配している……? 「ウェザブーチェンは、女神全員が話し合って決めるような平和なものじゃないのだ。世界を統治するひとりの神が、ツツバヤを捕獲しろと言った、それだけにすぎないのだ……。それがウェザブーチェンなのだ。それが、呪いなのだ……だから」 「____だから?」 「絶対に無理なのだ。危険な事をして女神たちに歯向かったら、タダじゃすまないのだ。我も協力したい。けど、我一人だけが味方でも、瞬殺されてしまうのだ。それにトブ、お主には旅仲間がいる。お主がその気でいても、トブは必要とされている。誰かが悲しむ」 旅仲間。マーガレットにラベンダー、ライ。 リュのポシェットの中で待っている、ツツバヤ。 それぞれがウェザブーチェンによって苦しんできた。ツツバヤなんて動けなくなった。元の生活には程遠い、死と生の間にある新しい空間、ウェザブーチェン。取り払うことが出来れば、またツツバヤの笑顔を見られるかもしれない。マーガレット達の新しい笑顔を見られるかもしれない。だから、ツツバヤを元に戻すということはウェザブーチェンを『解く』ということなのだろう。 なのに、ウェザブーチェンは、解きようがない。一切の希望もない。 たったひとりの支配者で、仲間をいくらつけたって簡単に瞬殺されてしまうという。 なら、リュたちの求める平和なんてもう、一生見られないのかもしれない。焦っても長い時間を掛けても、何も変わらない。 無理なものは、絶対無理なんだ。 ……え? どうして無理なんだ? 「リリー……聞きたいことがある」 「何なのだ、大体のことは話したのだ」 「女神ってさ……死ぬの?」 「いや、ウェザブーチェンと比較的立場は似ているが。上の女神は下の女神を殺すことが出来るという具合だ。我のような下っ端女神にはどの女神も殺せないが」 「女神の数は?」 「どうしたのだ、そんなことを。……多分1000近く居ると思うのだ。今も増えたり減ったりずっと人数は変化してるのだ。女神になったり、殺されたりしているのだ」 そうか、1000か。 思ったよりは多くなさそうだ。 「____もし、女神を全員説得できたとすれば、一番上の女神に会えるんだな?」
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