霧がかった記憶

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「トブ……何を言って……?!」 「諦めるような話じゃない。全部の女神を説得して、」 「一番上の女神は、どの女神も殺すことができるのだ」 「……そうか」 本当にそうなのか? 何だ、この違和感。どこかが噛み合っていないような歯車みたいな、不思議な感覚。 今の話だと、一番上の女神は女神全員を殺すことが出来るらしい。 現に女神は今も増える代わりに『減っている』動きがある。 きっとそれは本当だ。女神は女神を殺す。 だとしたら、なんで……。 「なんで、ウェザブーチェンを作ったんだ……?」 「……え?」 リリーと目が合った。 それで恥ずかしいとも今は思わなかった。 そうだ、おかしい。どうしてウェザブーチェンなんてあるんだ。 それが、一番おかしい……。 「どうしたのだ……なんでウェザブーチェンをって……何を今更」 「知ってる、ツツバヤを捕獲するためだ。」 「それ以外に目的は無いはずなのだ」 「そうじゃなくて。女神は、どの女神でも殺せるんだろ?なら、どうしてツツバヤは殺さなかったんだ?」 「……!」 「わざわざウェザブーチェンなんて呪いを作って、ツツバヤを止めた。なんでそんなことする必要があったんだ。気に入らなければ殺せばよかったものを」 「それは……突然ツツバヤが町で死んでしまっては、不自然に見えるから……?」 「ウェザブーチェンの方がもっと不自然だ。人が化け物になるんだから」 不自然かどうかなんて関係ないだろう。女神がツツバヤを殺さずに、ひとりの為にわざわざ複雑な呪いまで作った理由。考えられるのは、たったひとつ。 「つまり……一番上の女神はツツバヤを殺せない……といいたいのか?」 そう。女神はツツバヤを捕らえるために呪いを作ったんじゃなくて、ツツバヤを殺せなかったから呪いを作った。
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