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「どっちにしろ、我はその紙を持っていないのだ」
「リュも持ってない」
「ペルダモでこっそり盗んでくるか……。」
ぬ、盗む?!
何を言ってるんだこの人は?!
リリーは当然だというような余裕の表情だ。
「紙が手に入るのは、ペルダモ国だけなのだ」
「羊毛が必要なら、リリーが説得してスズランさんの羊から毛を取らせて貰えば……」
お前の頭は残念だとでも言うような溜息をつかれた。
「スズランがいるのは我達の後ろなのだ。羊はスズランが連れているから、羊を探すということはスズランとまた会うということなのだ」
ああ、そうか……。殺されかけたのにまた会いに行くなんて、自殺行為同然だ。
「居たとしてもこんな広い土地の中、どうやって探すのだ。」
確かに、広すぎるな。
「もうひとつ、紙を作れるのは技師だけなのだ。一般人に紙を作ることは不可能、盗むしかないのだ」
リュ達は一般人に入るのか? 体が電気の化け物となりたての女神なんてそうそう一般にはいないと思うが。
なんて口答えは慎み、改めてリリーと向き合った。
いつのまにか抱きつかれていた手は離れていたのだった。
「つまり、ペルダモ国に入ったら、マーガレット達を助けて、ウェザブーチェンの羊毛で出来た紙を盗むんだね」
童顔の目を頼もしく開き、頷くリリー。
「我は技師から紙を、お主は仲間を。」
「集合場所は?」
「明日の午後8時に、青目の塔にするのだ」
随分的確な指示だ。
「その時間と場所に特別な意味があるのか?」
「青目の塔は人が入る程の沢山の穴が空いていると聞いたのだ。もしかしたら身を隠せるかもしれないのだ」
「警備員に見つかる心配は?」
「……他に場所を知らぬのだ。王城と塔で迷ったのだが、どっちがいいのだ、お主」
待ち合わせ場所は危険な二択か。
「塔で。警備員が居ないことを願おう」
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