霧がかった記憶

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「それで離れ離れになって住んでいたんですね」 「そうなのだ。エサンだけ専門学校に通い、お主と妹は両親と住んでいたのだよ」 そうだったのか……。 「専門学校は、とても楽しい所だったのだ。何の専門学校かというと、地理。この世界のありとあらゆる場所を調べる専門学校だった……。広い草原の中にある国々、絶景、世界の謎を、班別になってよく調べに行ったのだ。エサンとは班でもサークルでも同じだったのだ」 「地理の、専門学校……。」 リュは、学校に行ったことがなかったと思う。マーガレットが短期間だけ通い、ラベンダーと出会った場所でもある学校、それしか思い出せなかった。 楽しいのか。行ってみたかったな……。 「だが、お主の親……特に母親が心配性な人でな、エサンのバイト先の会社が遠くに移転することになったのだ。その時に、あの地域へ引っ越しをした」 あの地域。その地名を口に出しては居ないが、悟った。 ツツバヤと昔暮らしていた、後に戦場になったあの場所……。 兄のために引っ越したのか。 「あの地域は、国境を超えて入る時には何も問題ないのだ。出るときに呪いという網にかかり、ウェザブーチェンを持つ者となるのだよ。だからお主の家族は全員、何も知らずにあの地域へ立ち入ってしまった」 マーガレットも……父さんも……母さんも。 仲はよかったのだろうか。どんな会話をしたんだろう。 何も記憶がない。きっとその日は存在していた筈なのに。 誰も覚えていない。まるで、その日がもともと無かったかのように。 「それから我とサークルの仲間は、暫くしてから隣の国からそこへ尋ねた」 「あの地域に学校があったんじゃないんですか? 別の国?」 「東にあった隣の国なのだ。気にする程遠い場所ではない、6キロといったところだろう」 それなら近いか。 「宿を出てそこへ引っ越したエサンにサークルメンバーの5人がついていった。お主の母親も父親も、それはそれは優しかった……。マーガレットも、私に美味しいクッキーをくれたのだ」 マーガレットが照れながら笑顔でクッキーを差し出す様子が頭に思い浮かぶ。 マーガレット……。無事か……? 「リュは、どうでしたか」 「会っていないのだ」 ……え? 会ってない? 「お主はもう既に家を出て行方をくらましていた。両親は隠していたようだが、ツツバヤと一緒にいたと目撃情報が沢山あったようなのだ。両親はお主を捨てた」
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