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「でも、お主は」
リリーの横顔に掛かっていた白く輝く髪が一瞬の風でなびいた。真っ直ぐ前を見ている目の長いまつげが黒く重なる。
「マーガレットの事を誰よりも大事にしているのだよ。その焦り。見ていて安心したのだ。家族でなくとも仲間として心配することが出来る」
そうだ。そうだ、仲間だ。
マーガレットは、リュにとっては家族ではない。家族を知らないリュが、それ以上に大切にしているもの。
旅仲間。ラベンダーもライも、マーガレットも。家族だと知らなくても大切にできる仲間なんだ。
そこに、家族なんて境界線はいらない。
今までもそうやって、仲間として支え合って、楽しく時に苦しくもがきながら旅をしてきたじゃないか。
「だから、マーガレットも、ラベンダーも、ライも……みんな助けないといけない」
「………………そうなのだ。何かあってからでは、もう遅い。何もかも、遅すぎてしまっては……これからの不死、無限の日数、大切な仲間を失った後悔を背負い続けて生きねばならないのだ」
リリー……?
呟くような声だった。
専門学校の話をしていた時の元気はなく、苦しんでいるような表情。
「リリー……。どうしてそんな顔をするんだ」
「丸眉はもとからなのだッ!!」
「そうじゃなくて、すごく……辛そうだよ」
「…………これから、お主は無限という日数、生き続けなければならないのだ。そんなこと、生きていると言うかもわからないが。きっとお主も、いつかわかるのだ。だからそう焦らなくてもいいのだ……」
「違う!!」
足を動かしたまま、リリーは横に並んで走るリュの表情をうかがった。
「一度、止まるのだ」
その声に頷く。
「せーの」
足を止める。リリーも200メートル程先で止まった。
同じタイミングで止まった筈なのに、差がかなり広い。とても速く走っていたんだなぁと実感する。
特徴的な建物などは見当たらなく、ただ広いこの草原。普段『光の使者』ことリュの走るスピードは確かめたことがなかった。同じ速さで走れる人が居なかったからだ。これも勿論本気ではないが、比べる物ができて初めて速かったことを実感する。
とか、何、呑気な事をブツブツ呟いているんだ。リリーは数百メートル先で待ってるじゃないか!
ちょっと足を動かすと、突っ立っているリリーにすぐ追いついた。
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