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今知らなくていい。知ったら君は不幸になる。言えることが限られている。きっと未来知ることになるって。それじゃ、何も変わらないじゃないか。
「何を秘密にしているのか、それを、知りたい。」
リリーは、黙ったままだ。意地でも話さないつもりだろう。
「もう充分なくらいつらい目にも遭ってきた。これ以上の辛さはないよ。限界をとっくに越してる。」
「でも、」
「ずっと辛かったし、寂しかった。ツツバヤと暮らしてきた頃からそうだから、今更現実に戻っても、元の暮らしを取り戻しても何も変わらないかもしれないし、余計不幸になるかも予想はできない。それでもきっと、リュは……探してるんだよ、幸せな『未来』を」
「……トブ……。」
そう、未来。
永遠を強いられ、しかし時によっては殺されてまた別の『永遠』になる、時の止まったリュ達の未来……。ウェザブーチェンなんて考えたことも聞いたこともなかった、あの幸せな過去の別世界。
「でも、ウェザブーチェンは呪い。これ以上何かを求めてはいけないのだ。もう、どうしようもないのだ……。」
「違うよ。今、わかった。」
リュは……。
「きっと、呪いを解く方法を探しているんだ、リュは」
「呪いを解く?!」
白いドレスをふわっと翻して驚くリリー。
「何を言っているのだ、お主?! そんなことをすれば、お主は……本当に、死んでしまうかもしれないのだ……」
「どうして呪いを解くと言っただけで死ぬってわかるんだ」
「……それは……」
やっぱり、理由は教えてくれない。
息を吐いて、言った。
「誰かが変えようとしないと、何も変わらない! それをリュが変えようとしてるんだ!! リュが1人死んだところで、何も変わらない。でも、死んでも成功する確率が1%でも0.1%でももっと小さくても存在するなら、それは誰かがやらないといけないんだ!!」
国が遠くに見えるだけの平地。
足元でザッと砂の音が鳴る。
……あれ?
草原がない。
ずっと続いていた黄色い草原がプッツリと何もかも無くなっていて、代わりにあるのは薄く湿った茶色い地面だけだった。
走っていて気が付かなかった。
「……無理、なのだ……。」
か細く震えた女声が微かに聞こえ振り返った。
「そんなこと、無理、なのだ……ッ」
リュの中で、プツリと何かが切れた。
「やってもないのに、先に諦めたら、幸せになんてなれない!! ……ッ?!」
「もう……やめて……」
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