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眩しい夜景をぼぅっと見つめる。
あのひとつが、彼の暖かい家庭なのだろうか。
彼が好きなビターの板チョコ。すっかり冷えきった缶コーヒ。鳴らない携帯電話。
もう、来ないかもな。
手に持ったチョコレートの封を開けて、少しだけかじる。
「お待たせ。ってかチョコ食べちゃってんじゃん。」
後ろから声をかけられる。
振り返るとそこには、待ち焦がれた人。
何よりも輝いて見えるから不思議だ。
「遅いよ。」
「ごめん。子どもがぐずっちゃってさ。
でもしっかり寝かしつけてきたから、今夜はゆっくりできるよ。」
と、Vサインを作って、いたずらに笑う。
「待ってた。」
それだけ言ってやっと立ち上がる。
悪いことをしている。自覚はある。だから責めたりできない。
でも少しだけ悔しいから、
またチョコを少しかじって、
ちょっとだけむっとした顔をしながら、
抱きつくように、そっと、強引に彼に口づけをした。
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