淋しがり屋の私と、透明になった彼。

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彼の笑顔が浮かんだ。 それは何年前の笑顔で、誰に向けたものなのか。 彼の隣にいる私の顔が浮かんだ。 それは何年前の顔で、誰に向けたどんな表情だったのか。 家事は好きだ。 誰かのために、私のためにする事だから。 仕事も好きだ。 誰かのために、私のためにする事だから。 結婚したのは、失敗だった? 彼との時間は、ズレとか衝突もあったけど、嫌いじゃなかったんだ。 だって、私の左手の薬指には、輝きがある。 無意識に指輪に触れてる自分に気付いてる。 あなたの指には、ある? 私との絆は繋がってる? 私の事なんて、忘れた? 「ずっと、ずっと待ってるから」 この家で、あなたを。 どれだけ淋しくても。 どれだけ心細くても。 きっと帰ってきてくれるから。 あなたを、愛しているから。 「待ってるよ……」 きっと、想いは通じるから。 すっかり眠った私に、キスをしたのはあなたでしょう? わかってるんだからね……。 「おかえり」 「ただいま」 *end*
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