淋しがり屋の私と、透明になった彼。

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いいや、そのままにしとこう。 あんまり静かなのも嫌だし。 喉が渇いてキッチンに入り、コップに入れた水を飲み干す。ふと冷蔵庫の扉を見て、中に入っているものを思い出してみた。 彼が好きなビール。私は飲まないけど、こうして買っておけばいつでも彼が飲めるかなって。 少し悲しくなって、気分転換にシャワーを浴びようと支度をする。まだテレビでは映画情報が続いている事に気付いた。 二人で並んで座っていたソファーが、今は無人でテレビの光を写している。淋しさばかりが増えてくみたい。そのせいで、ソファーは滲んで見えた。 早足でバスルームに入り、急いで服を脱いで熱いお湯を浴びた。 涙の方が熱かった。 毎日ひとりでいると、たまに家の中で物音がするような気がする。気のせいなんだろうけど、確かめるのも恐い。 彼が帰ってきたならいい。 玄関の鍵、閉めたっけ? ひとりでいると無用心になる。 シャワーの音を聞きながら、聞き耳を立てている私。熱いお湯を浴びてるはずなのに、背筋が、指先が……寒い。 彼が帰ってきたなら、いい。 そうじゃなかったら? ……キッチンで音がしたように感じた。
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