淋しがり屋の私と、透明になった彼。

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一気に睡魔が逃げていった。 目を開けて、体を起こすといつの間にかソファーに横になっていた。 胸の辺りまでに、暖かいものがかけてあって、それがなんだかすぐにわかった。 彼の、ブランケットだ。 私が、プレゼントした。 「……これ、ブランケット……なんで?」 私しかいないリビングに、短く反響する声。 そんな、まさか。 部屋の中を見回しても、当然のように私しかいなくて。 「ちゃんと部屋に片付けて置いたのに……」 彼の部屋は、毎日掃除している。 天気のいい日はふとんを干して、窓を開けて風をいれて。 このブランケットも、使っていないのに洗濯して。 でも、彼のにおいがする。 彼の記憶がある。 膝を曲げて、ブランケットを握りしめながら顔を押し付ける。
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