淋しがり屋の私と、透明になった彼。

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「……夢だと、思ったのに……DVD観たせいかと思って……」 すっかり女優になってた。 「あ、"愛してる"なんて……っ、今更よ……」 でも、映画の台詞なんかじゃない。 だって彼の声で、彼の言葉。 私への気持ちでしょ? 「何処にいるの……? 私が、私があんな事言ったから……出て行っちゃったんでしょ?」 女優みたいに綺麗な涙じゃない。 ボロボロとブランケットを濡らしていく涙は、宝石とは似つかわしくないけど。 ブランケットからかすかに感じる彼の存在に、罪悪感とか、後悔とか、悔しさも、淋しさも溢れてくる。 「ごめん、ごめんねぇ……、謝るから……帰ってきてよ……ぉ」 ブランケットを抱きしめて、彼の温もりにすがろうとする。でもやっぱりブランケットはただのブランケットで、抱きしめ返してくれる訳じゃない。 なのに、なんで? ひとりで泣いてるのに、なんでこんなに暖かいの?
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