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淳が東京に行き、私は地元の高校に通い始めた。
クラスはいい感じのクラスでそれはそれで楽しかった。
でも、淳の事が気になっていつも泣いていた。
それに関しては、誰も、声をかけてくれなかった。
三年というのは早いもので、卒業間近になった。淳との遠距離恋愛は文通だった。淳は色々書いてきてくれた。もちろん、好きだという気持ちも変わらないと。私は、その手紙のおかげで、高校生活を乗り切ったようなものだった。
高校を卒業し、就職をした私は、何もかもが新鮮だった。雰囲気の良い職場に恵まれ、たまには、みんなと飲みに行ったり、友達の誘いで遊びに行ったり。毎日が充実していて、いつしか、淳の事を考える時間が以前より少なくなった。
この頃は、携帯が普及していないので、淳のとは、文通より、夜なかの電話が多くなった。大体は、淳がかけてきてくれて、帰りが遅くなったら私からかけてと、交際は順調だったのだが、だんだんとすれ違いが多くなり、夜なかまで遊んで帰らない私と、淳の連絡が合わなくなったある日、いつものごとく遅く帰った私に、母が、
「何時でもいいから電話してって淳くんから電話が来てたよ」
と教えてくれた。
その頃は、遊びに夢中で、充実した毎日を送ってた私には、何時でもいいって言ってもこの時間じゃ遅すぎるでしょうと、その日は電話をせずに寝てしまった。
充実していた私の心に影がさしたのは、数日後だった。
知らない女の人から電話がきて、
「淳をしらないか」
と聞かれた。解るわけないでしょう、私に。そしたら、その彼女は、部屋に私の電話番号が書いてた手帳を書いて何処かに行って、居所がわからないという。
その時気がついた。淳の寂しさを。淳への思いの足りなさを。
「最悪だ・・・この世の終わりだ。淳がいないなんて・・・」
あれから30年。結婚はしたものの、心のどこかで淳を探している私がここにいる。
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