それは始まり

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それは始まり

「最悪だ…この世の終わりだ…」 「何言ってんですか、まだはじまってもいないでしょう。ほーらちゃかちゃか働いて、とっとと世界創っちゃってくださいよ、まだやることいっぱいあるんですから」  後に人々に【カミサマ】と呼ばれる男は、ぐうっと両腕をのばすと後ろに倒れ込んだ。そこを容赦のない蹴りが襲う。 「もう無理…疲れた…ミスった…労わって…」 「いやいやいやいや、だいたいこの作業3日前までに終わらせとく予定でしたよね?総務部からさっさとやれって催促されてるんですよ。納期までに仕事終わらせない上司の尻を叩くのは部下の役目ですからね。はい立った立った!」  蹴りと罵声に耐えかねた【カミサマ】は、何やらブツブツと呟きながらゆっくり立ち上がった。「なんだこいつ…こちとら世界創ってんだぞ…疲れた上司足蹴にするとか悪魔か…」とかなんとか、聞こえた気がする。気のせいだ。 「で?何をミスったんです?話くらいは聞いてあげますよ」 【カミサマ】は、一瞬形容しがたい表情でこちらを睨んだ後、しぶしぶ口を開いた。 「…いやね、ちゃんと計算して創ってたんだよ。…創ってたんだけどさ、ちょっと、数字を一ヵ所間違えちゃってたみたいでね。…つまりその、今私が創ってるこれ、うまいこといかないかもしれないんだよね」 「と言うと?」 「つまりね、上から頼まれてた『無限に続く世界』にはどうもならなさそうなんだよね」 「ほう…ってええぇぇ!?それ上に怒られる案件じゃないですか!ちょっと、何でそんなことになったんですか!」 「うん、眠い目こすりながら頑張ってたらこうなっちゃった」 「なっちゃったじゃないですよ!あああぁぁ、僕怒られるの嫌ですよ!なんとかしてくださいよ!」 「それがさ、なんともならなさそうなんだよねー。修正不可能なプログラム部分にミスがあったみたいで。だいたい上も悪いんだよ?私ここ二日くらい家帰ってないどころか寝てないからね?頑張ったよ?残業代出るよね?」 「知りませんよ!何でそんなに落ち着いていられるんだよ!うああぁぁ、もうどうするんですか…怒られる…絶対怒られるよ減給だよ…」 「……そこでだ、部下くん。ものは相談なんだがね」 「なんですかまだ何かあるんですか」 「今創ってるこれ、おそらく140億年は保てる」 「…ほう」
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