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ダグは意味なく笑いながら、
「自分で脱いだんだろ?朝起きたらああなってた」
と、言った。
「信じていい?」
「信じてくれ」
そこは強く言った。
ケントは少し安心したように、
「それならいい」
と、言って出て行った。
ダグは下着をシャワーで手洗いすると、ドライヤーで乾かしてそれを履いた。
リビングに行くと、ケントがコーヒーとフレンチトーストを用意してくれていた。
「悪いな」
「いや、俺、客が来るのは好きなんだ。好きでやってるからいいんだ」
ケントは嬉しそうに笑った。
二人はソファーの横に置いてあるテーブルにつくと、朝食をとった。
「表の様子が見たいんだけど…窓、あるかな?」
「ああ、奥の部屋しか窓が無いんだ。俺の寝室。入っていいよ」
「じゃあ、後で入らせてもらうよ」
二人は小声で会話していたが、アイラはスヤスヤと眠っていた。シーツがちゃんと肩まで降りていて、顔が出ていた。ケントがかけなおしたのだろう。
ケントはアイラの寝顔を見つめながらトーストをかじった。
「さっきはゴメン」
「何が?」
「あ、疑ったりして…アイラのこと…」
「心配なんだろ?仕方ない」
「うん…キスマークがあったから…胸に…」
そこまで見ていなかった。
「そう、なんだ」
「俺には怒るくせにさ、キスマークつけたら…すごく怒るんだ」
ケントは笑った。
ダグはケントが気の毒に思えて仕方なかった。多分、利用されるだけされて、捨てられるパターンだ。
「スズキさんならいいのかな…」
ケントのその言葉は怒っているというよりは、寂しそうだった。
朝食を終えた後、ダグは奥の寝室に入らせてもらった。そしてベランダから外を見た。
そのソバで、ケントがシャワーを浴びる為の準備をしていた。
ここら辺は住宅街だ。住宅の合間にアパートやマンションが並んでいる。
向かいの家では中年の男が庭で水やりをしている姿があった。犬の散歩をしている老夫婦がゆっくりと前を通り過ぎて行く。
このアパートの一階に、人が頻繁に出入りしていた。
「この一階って、店?」
ダグがベランダから下を覗いた。
「小さなスーパーと、隣がパン屋」
「ああ、それでか…」
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