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数日前
ブロードウェイ、時計の針は19時をだいぶ回っていた。
昼夜の感覚もわからなくなるほどのネオンの洪水の中、行きかう人の波を縫うように、一人の男が走っていた。
「すみません、すみません」
ぶつかりそうになっては避け、通行人からヒンシュクを買っている。
地下鉄を下りてから、目的地のホテルのロビーまで、足早に歩けば約5分。
だが、今のダグにはその5分でさえ許されないロスだ。待ち合わせの時間は過ぎている。
今日は付き合い始めて10ケ月が経とうとしている彼女の誕生日。
ダグはお祝いにホテルの最上階にあるフレンチレストランを予約した。行ったことはないが、ネットで見る限りではとても品格のある店で、フレンチでは有名なシェフがいて、セレブの女子に人気があるらしい。
彼女…ミアは、その店の名前を出した時に遠慮していたが、ダグはそんな時くらいカッコつけたかったのでほぼ強引にその店に決めた。
なのに、、、ダグが言い出したことなのに、もう、20分、遅刻している。
走りながらも何度も時計を見た。何度見ても時計の針は19時から逆行することはない。
やはり遅刻だ。
ダグはだいたい遅刻する。時間に不規則な仕事をしているせいだが、どんなに重要な仕事が理由でも、ミアにすればただの言い訳にしか過ぎないらしい。それで何度も怒られた。
なので、ミアとの約束がある時は、とても気をつけてスケジュールを組んでいるつもりなのだが…。
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