第4章 後楽園

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暖かい春を感じながら、後楽園を歩いていた。日本三名園の一つである。散歩にももってこいだった。中には結婚式が出来るスペースもあった。 真由美は売店で桜餅を二つ買うとベンチ前の男性に手を差し出した。 驚いてこっちを見上げる男性。純平だった。 「ありがとうございます」 「先日のソフトクリームのお礼です。また会いましたね」 岡山の観光名所を練り歩く純平。いったい何をしてるのだろうか? 真由美は気になっていた事を切り出した。 「いつも1人ですけど、奥さんは出かけないんですか?」 横には神妙な顔をした純平がいた。 実はー。 純平はポツリポツリと重い口を開いた。驚いた事に純平は離婚していた。指にはめていたリングもまだ気持ちの整理がつかず外せないのだという。一度は関東に戻った純平だったが新しく気持ちを入れ替えるために前妻との思い出の場所をまわっているのだという。 「余裕が無くなっちゃたんですよね」 純平の表鯖からは悔恨の気持ちが見てとれた。 「慣れない土地でまったくやった事の無い仕事を始めました。郷に行ったら郷に従えの精神で頑張りましたが、目に見えない文化とか言葉のニュアンスとかわからずに人間関係がうまくいかなくて。仕事のイライラを妻にぶつけてしまいうまくいかなくなりました。今でも後悔しています。よりによってあんな大切な時期にひどい言葉 を妻に投げかけてしまったなって」
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