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純平の言葉は真由美の心に染み渡るように流れていった。
「それから半年間やり直そうと努力しました。だけど、ダメだった。二人の間には深い溝が出来てしまったんです。それからことあるごとに岡山にくるのは自分の過ちを認めるため、前に進むために最後に岡山の景色を、妻との思い出を心に焼き付けておきたいと思ったからです」
こんな長々と聞いてもらってすみません。純平が小さく首を垂れた。
「いや、そんな」
純平の目は濡れていた。
真由美の膝にも雫が垂れた。
奥さんの赤ちゃんを失った悲しみを思うといたたまれなかった。
純平を責める気にもなれなかった。一度は故郷を離れてまでも岡山で必死で生きていこうと決めた純平の覚悟を讃えたかった。
「でも、もう今日で僕は関東に帰ります。吹っ切れました。真由美さんとも会えて良かったです。ありがとうございます」
純平がリングをそっと外してカバンにしまった。
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