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初めて聞く話だった。真一が抱えていた心の悲しみを吐き出してくれて嬉しかった。
心の迷いも消えた。一生、真一についていく。岡山もまた大好きになれた。またここにいつでも帰ってこよう。そう思えた。幸せの形は一つじゃない。地元に残ることを決めた美香も岡山に移住することを一度は決意した純平も正解だ。結果はどうあれ自分で自分の道を決めた。その先の人生を必死に生きている。
私もだ。覚悟を決めた。真一、鈴音と三人の生活が始まる。大きな喜びが体を駆け巡り、出産前の不安はいつのまにか消え失せていた。
病室には夏の到来をつげる風が舞い込み頬を優しく撫でた。リンリンと鈴の音が聞こえる。鈴音と名付けたのはもう一つ理由があった。安産祈願で訪れた地元の鈴岳神社にちなんだのだ。神様、無事に鈴音を誕生させてくれてありがとう。毛布にくるまっている鈴音がくしゃくしゃな顔を真っ赤にして桃太郎のように力強く大きな泣き声を上げ始めた。
完
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