第5章 出産

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第5章 出産

地元では有名な産婦人科で鈴音が可愛い産声を上げた。 両親と祖父、祖母、兄弟がすぐに駆けつけてくれた。 家族っていいな。やっぱりそう思えた。心強かった。 真一には昨日の段階で明日生まれそうってことを伝えてあった。頑張れ、応援してるから。そう言ってくれた。純平の話しを聞いてから心配をするのはやめた。赤ちゃんの命には変えられなかった。 「真由美!綺麗なお花が届いてるが」 母が両手一杯の花を差し出して来た。目に飛び込んできた大輪の花。そして花の下に目が釘付けになる。あの赤いマグカップが鎮座していた。いや、良く見ると違った。取手のような形をした可愛い花瓶だった。 真一がこの日の為に用意しておいてくれた。目頭が熱くなった。 抱き抱えると小さな音がした。取ってには小さな可愛い鈴がくくりつけてあった。その横には折りたたまれた手紙があった。そっと開く。 《真由美へ、よく頑張ったね。立会い出来なくてゴメンね。前に真由美から聞かれていた事話すよ。新たな命に誓って嘘は言わない。 今は真由美と鈴音のことしか頭にありません。今日を特別な思いで迎えています。前妻との間には実は子供がいました。だけどほとんど触れ合う事は出来ずにわかれました。婿として婚姻関係を結び姑のいびりに耐えてきました。前妻と姑は結託して俺を娘から遠ざけました。理由はわかりません。信じられないかもしれないけれど娘が生まれて一年の間に触れあったのは数えるほどしかありませんでした。ある日、何かが壊れて家を飛び出しました。それからもう子供にはあっていません。子供の事は忘れて生きてきました。ようやく今日からまた子供のいる夢のような生活を送ることができるよ。真由美のおかげです。ありがとう。早く戻って鈴音の顔を見せにきてね》
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