ブレイン・リーダー

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エレミア君からの折り返しがあったのは、店を出て大通りを五分ほど進んだところだった。 『……あー、おはようございます。どうしたんです、主任。こんな朝早くに』 「実はね、大変なことが起こったんだ」 『大変なことぉ? 本当ですかぁ? どうせまたしょうもない事じゃないんですかぁ?』 寝起きだから不機嫌なのでは無く、彼はだいたいいつもこの調子だ。 私はエレミア君に事情を説明した。 『あぁ……。それは、まあ、なんというか……』 「信じてないのかい?」 『……呆れているんですよ。わざわざ屋外に持ち出して、それで無くしたんですか。だいたい実地試験なんて聞いてませんよ』 「昨日、ふと思い立ってね」 『研究室の外なんかでなんの試験……まさか』 「うん、ちょっとね」 『主任! その先は言わなくて結構――』 「通行人でテストをしてみようと思って」 『ああ……やっぱり』と盛大なため息。 「そんなにダメだったかな?」 『あのねえ、主任。それ人体実験じゃないですか』 「人体実験だなんて大げさだな……本当に?」 私は思わず立ち止まった。 『民間人相手に、研究中の”軍用兵器”を無許可で照射したんですよ。違法な人体実験そのものです』 言われてみれば、確かにそうだ……。 『しかも我々の身分は現在、軍属と同じ扱いになっていますからね。軍法会議で裁かれるってわけです。最高刑は死刑、最低でも終身刑』 「そんな……あんまりだ……」 死刑という予想もしなかった言葉の直撃を受け、私はうろたえた。 もちろん、紛失したことについて何らかの処罰はあるだろうと覚悟していた。 謹慎、解雇、損害賠償、ひょっとしたら数年の懲役。 しかしまさか死刑とは。 死刑はないだろう。軽くても終身刑だって? それはあまりにも酷い。人体にはなんの影響も無いのだ。 電話越しに私の狼狽を感じ取ったのか、 『まぁ、だからこの件は隠蔽すべきだと思います。紛失したことが露見しなければ、紐繋ぎで人体実験……いえ、実地試験の事実も無かったことになりますからね。黙っていればわからない』  「そ、そうか。うん、いや待て……だけど。ブレインリーダーの紛失は……実機が無いんだから、ごまかしようがないじゃないか?」
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