2人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
引き出すにはカードか、
印鑑と……通帳。
「まさか」
慌てて銀行関係を収納しているボックスを取り出す。
いつものように、
数種類の通帳と印鑑が整然と収まっている。
僕は震える手で、
通帳の束を取り出し、
一つ一つ銀行の名前を確かめていった。
「ない……」
愕然とした。
無くなっていた通帳は、
50万以上が入った高井銀行と10万円程入っていたはずの安井銀行。
どちらも、
普段使用しない貯蓄用の銀行だった。
じわりと涙がにじみ、
眼鏡越しの世界が歪んでいく。
やっと。
やっと。
やっと、
倫子さんとの同居が見えてきたのに。
最初のコメントを投稿しよう!