第1章

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引き出すにはカードか、 印鑑と……通帳。 「まさか」  慌てて銀行関係を収納しているボックスを取り出す。 いつものように、 数種類の通帳と印鑑が整然と収まっている。  僕は震える手で、 通帳の束を取り出し、 一つ一つ銀行の名前を確かめていった。   「ない……」  愕然とした。  無くなっていた通帳は、 50万以上が入った高井銀行と10万円程入っていたはずの安井銀行。 どちらも、 普段使用しない貯蓄用の銀行だった。  じわりと涙がにじみ、 眼鏡越しの世界が歪んでいく。  やっと。 やっと。  やっと、 倫子さんとの同居が見えてきたのに。
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