第1章

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第1章

「そんな……」  暗闇の中、 光るパソコンの画面を凝視し、 僕は青ざめた。  (落ち着け。 どこか、 数字を間違えたに違いない)  もう一度。 キャッシュカードの番号とパソコンの数字キーを慎重に見比べ、 確実に打ち込んでいく。  頼む。 三度目の正直だ。 祈りを込めて、 enter。  ポッと、 画面が切り替わった。 『お客様のカードは、 既に解約済みです』  サァーっと、 血の気が引いていく。  僕は今の一度だって、 銀行の解約手続きをした試しがない。 この銀行口座は貯蓄用で、 預け入れこそすれ、 一切引き出してはいない。  彼女、 倫子さんとの新生活に向け、 古い家電を一新しようと、 断腸の思いで引き出しを決めたのだ。 随分立っているからうる覚えだが、 50万円以上は入っていたはずだ。  解約なんて、 絶対にありえない。  依然、 解約済みの文字を凝視しながら、 真っ白な頭で考える。  一体全体、 これはどういうことだ。 考えれば考えるほど、 同じ答えが頭をよぎり、 カードを持つ手がブルブルと震えた。  つまり、 僕以外の誰かが、 勝手に僕の銀行口座から金を引き出し解約した……  いや、 そんなことがあるはずない。  第一、 このカードはずっと僕の財布の中にあったのだ。
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