Side:朱音

15/16
181人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
   え、とメグが疑惑の目を浅海先生に向けた。 「なんで? 織部さんは裏切られたんでしょ? なんであさみんがそんなこと思うの?」 「俺は、坂田がどのくらい彼女にホレて大事にしてたか、よく知ってる。だから、裏切ってしまったことに対する坂田の罪悪感も理解できたよ」  そこで浅海先生は、ひと呼吸入れた。 「……だからこそ、どうかと思ったんだよ。  どうして織部陽香はもっと泣いてわめいてすがって、あいつを止めてやらなかったのかって。  彼女からしたら裏切られたショックでそれどころじゃなかったのかも知れないが、本当に坂田のことを好きだったんなら、大事にしていたんなら──  やつの言ってることなんて無視して、意地でも離れなければよかったんだ。  やつの手を放すべきじゃなかった」  ズキン、と身体を真っ二つに裂くような鋭い痛みが私の中を駆け抜けた。 .
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!