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スローモーションの中で、風が吹いて傘がふわ……と浮き上がる。
身をすくめ、肩までの髪をなびかせながら小さく口唇を尖らせた女性の顔が見えた。
「……陽香……」
頭が、真っ白になって──俺の瞳から、はらはらと涙が零れ落ちる。
……バカじゃないのか、俺。
時間が経ちすぎて、追いかけることすら忘れてしまった体の芯に、痛い程の残り火が揺らめいていた。
たったひと目陽香を見ただけで息を吹き返した恋心に、裏切りとか贖罪とかそんなもの全部内側から吹き飛ばされて──ヒリヒリと全てが、痛い。
夢だけで会えるならそれでいいだなんて、どうしてそんなこと思えたのだろう。
それよりも、どうしてあの時彼女と離れようとしか思えなかったのだろう。
陽香はこんなに──こんなに俺の一部になっていたのに。
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