ヤンキーと人探し

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放課後、いつものようにうら庭にいく。 幽霊は既に柳の下にいて、ふわりと微笑んだ。 「島田涼さん!こんにちは!」 「どーも。今日はあんたが先なんだな」 「えぇ、なんとなく先に来てみました」 嬉しそうに笑う顔が、なんだか犬っぽい。 例えるなら、無邪気な豆柴あたりが似ているのかもしれない。 今日のユキの服装は仕立ての良いブラウスに、ハイウェストのワインレッドのスカート。 クラスの女子のように下品なミニスカではなくて、膝下の長さ。 しかし野暮ったく見えないのは、たぶんユキの足が細くて長いから。 その様はどこをどうみてもお嬢様なのに、その頭とお尻にブンブン動く耳としっぽが見える。 やめろよ。 そんな露骨に嬉しそうな顔すんなよ。 まるで俺が来ることを待っていたのではないかと、つい錯覚しそうになる。 何でだか恥ずかしい。 「明日はホームルーム長くなるから、遅くなる」 なんでだかユキの顔を直視出来なくて、必要以上にぶっきらぼうに言ってしまった。 別に約束何てしていないのだけど。 でもユキに会えないと、探し人の情報もなくて困るから。 「分かりました。明日はゆっくりきます!」 ゆっくりきますって、だからおまえのホームはどこなんだよ。 ユキの言葉に苦笑いがもれた。 ユキと桜の下で出会った時も、柳の下で再び会った時も、本気で怖かった。 あちこちに出没するなら知っておきたい。 今やユキに対する恐怖心はあまりないのだけど。 「ところでさ、桜の下と柳の下、どっちが本当の居場所?」 思いって問いかけてみることにする。 「どういった意味でしょうか?」 「ほら、幽霊って桜の木の所にいるイメージない?」 だから2度目に会ったとき、俺は桜の下を避けた。 「でも柳の下にもいたから」 俺の問いにユキは真面目な顔をしていう。 「幽霊とは古来は柳の木と共にあるものだったようですよ。古い幽霊画を見ても柳の木と幽霊が描かれています」 まるで他人事のように飄々と話す姿が、何だか可笑しかったけど、それを本人に指摘して良いものかわからない。 いいや、世の中にはそっとしておいた方が良いことも沢山ある。 そっとしとこう。 「一説にはしだれ柳の長い枝が、幽霊を連想させるからっていう話もあったみたいです」 言いながらユキは空を見上げた。
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