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暖かい春風が吹き抜けるお気に入りのカフェ。
栞に「今から会えませんか」と連絡を受けてやって来たのはいいけれど、どうやら彼女はご乱心中のようだ。
いつもはピンと綺麗に伸びている背筋が丸められ、テーブルに突っ伏している。
おまけに纏っているオーラもどんよりしてるように見える。
この天気の良さと、何ともミスマッチだ。
「栞、おまたせ」
珍しい姿にただごとではない何かがあったのだと思いつつ、向かい側の椅子に腰かける。
すると彼女はむくりと体を起こし、少し赤くなっている目で私を見つめてきた。
「…奈緒さん」
私の名前を呼ぶ声も、覇気がなくて弱々しい。
「どうした?何かあったの?」
そう問えば彼女はその大きな瞳を潤ませて、再びテーブルへと突っ伏してしまった。
これでは埒があかない。
あと、周りからの視線が痛い。
「ねえ栞。話聞いてほしくて、私を呼んだんじゃないの?」
「…そう、です」
くぐもった声で返事がくる。
「じゃあ、さ。話してよ。話せるとこだけでもいいからさ」
私がそう言えば、栞はぽつりと声をこぼした。
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