第1章

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暖かい春風が吹き抜けるお気に入りのカフェ。 栞に「今から会えませんか」と連絡を受けてやって来たのはいいけれど、どうやら彼女はご乱心中のようだ。 いつもはピンと綺麗に伸びている背筋が丸められ、テーブルに突っ伏している。 おまけに纏っているオーラもどんよりしてるように見える。 この天気の良さと、何ともミスマッチだ。 「栞、おまたせ」 珍しい姿にただごとではない何かがあったのだと思いつつ、向かい側の椅子に腰かける。 すると彼女はむくりと体を起こし、少し赤くなっている目で私を見つめてきた。 「…奈緒さん」 私の名前を呼ぶ声も、覇気がなくて弱々しい。 「どうした?何かあったの?」 そう問えば彼女はその大きな瞳を潤ませて、再びテーブルへと突っ伏してしまった。 これでは埒があかない。 あと、周りからの視線が痛い。 「ねえ栞。話聞いてほしくて、私を呼んだんじゃないの?」 「…そう、です」 くぐもった声で返事がくる。 「じゃあ、さ。話してよ。話せるとこだけでもいいからさ」 私がそう言えば、栞はぽつりと声をこぼした。
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