第1章

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お茶にお菓子、空調もちょうどいいくらいに設定してさあ準備万端。いくらでも長話ができる環境だ。 栞はソファーに座りながら、猫のクッションを抱きしめて未だに鼻を啜っている。 目元なんか擦りすぎて真っ赤だ。痛々しい。 「栞。これ目に当てときな」 水にくぐらせたタオルを差し出せば小さな声でお礼を言われる。 タオルを目元に当て、背もたれに体を預け上を向く姿は見ているこっちまで悲しくなってくる。 何て声をかければいいか迷っていれば、少しは落ち着いたのか栞の方から話し始めてくれた。 「昨日、祐斗さんと会ったんです。最近お互いの仕事が忙しくて中々会えなくて、久しぶりに会えるからって、すごく嬉しくて」 目元のタオルと上を向いているせいで表情は見えないけれど、栞の声が震えていることだけはわかる。 「駅で待ち合わせをして、私、楽しみで大分早くに来てしまって。まだかな、まだかなって祐斗さんを待っていたらいつも通り、待ち合わせの時間ぴったりに来たんです。駅で待ち合わせということ以外何も決めていなくて、これからどうしようかと、言おうと、したら…」 「別れて、ほしいって」 最後の方はほとんど言葉になっていない。 けれど隣に座っている私にははっきり聞こえた。 …ふむ。 よし。祐斗君とりあえずとっちめよう。 こんな良い子を振るなんて頭おかしい。 私の脳内では早々に結論が出たけれど、話の方は祐斗君に別れを告げられたことしかわかっていない。 いや、それだけで十分糾弾理由にはなるけど一応、一応何が原因なのかは聞こうじゃないか。 栞の口からそれを言わせるのは酷かもしれないが、大事な親友の彼氏…いや元彼を痛めつけ…じゃない懲らしめるには一つでも多くの糾弾材料が必要だ。
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