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「やっと見つけた」
待ち望んでいた声に、私はゆっくり振り返る。
そこには雪が降る寒い夜に息を切らせて走ってきた男の子が1人立っていた。
「遅刻。もう帰ろうかと思った」
「ゴメン! ちょっと道に迷っちゃって」
「ふーん?」
わざとらしく不機嫌を装う私に、彼も苦笑いを浮かべて分かりやすい嘘をつく。
「まあ、いいわ。はい、これ」
「・・・・・・もうちょっと雰囲気作って渡せないのか、お前は」
無造作にチョコを差し出す私に、彼は呆れながらも嬉しそうに受け取り、チョコの包装を丁寧に解いていく。
「自信作よ。食べたら間違いなくとろけてしまうわ」
「へぇ、そりゃ楽しみだ」
ハート型のチョコを無邪気な笑顔でかじりつく彼。
「んっ!?」
その表情は咀嚼し初めてすぐに凍り付き、彼は地面に倒れてもがき苦しむ。
その様子を私は満足そうに見下ろす。
「--最低な浮気男の心臓が、ね」
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