第1章

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「最悪…この世の終わりだ…」 彼はきっと尻の軽い女だと思ったに違いない。 彼氏と別れて半年、友達が見かねて合コンをセッティングしてくれた。 見かねてもなにも、私は1人で写真を撮りに行ったり映画を観たり楽しんでいたんだけど、誰にでも1人くらいはお節介な友達がいるもんだ。 今までそんなに付き合った人はいないんだけど、好きだったはずなのにそういう関係になるとなんだかうまく行かなくて、自分の男を見る目を疑い始めていた。 そんな気持ちもあって、乗り気じゃなかったんだけど人気のお店を予約してくたので、食べ物に釣られるように行ってみた。 ご飯はおいしかった。男の人も1人だけ話が合う人がいた。 サラリとした髪に細面、メタルフレームの眼鏡をかけて、指が細くて長い綺麗な手でしょっちゅうフレームに触れていた。 第一印象は神経質そうな人だなと思ったんだけど、私のたいしておもしろくもない話をきちんと聞いてくれた。 写真を撮るという趣味があったし、彼はアニメがメインだったけど物語を楽しむということを知っている人だった。 世の中には、本を読んだりお芝居を観たりするのは時間の無駄で馬鹿な事だと思っている人がいる、ということは元彼で嫌というほどわかったので、安心できる点だった。 そんな感じで、たまに映画を観に行ったり写真を撮りに行くようになった。 1人で行くのも気楽でいいんだけど、撮った写真や観た映画の感想言ったり、彼と話しをするのが楽しかった。 正直、男の人と話しをしていて楽しいと思ったのはほぼ初めてだった。 世間一般の男らしさはないし、ちょっと頼りない感じはするけど、ちゃんと自分の意見を持っているし、私のことをきちんと見てくれていると感じた。 それは今までの彼氏には感じたことの無いことだったし、こんな男の人もいるんだなと思った。 段々、会うのが楽しくなって気付いたときには、「好きなのかも」となっていた。 誘う頻度は私からの方が多いけど断られることはまずないし、話している感じからもどういう好意かわからないけど好意を持たれてるとは思うんだけど、どうにも掴みどころがない。 彼女はたぶんいないしモテるタイプでもなさそうだし、男子校→理系学部→SEと周りに女っ気もなさそうだし、私じゃ駄目かな。 このままでも楽しいは楽しいけど、やっぱり好きな人とは手を繋いだり触れたりしたいから、きちんと付き合いたい。
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