烏ヶ國ーｶﾗｽｶﾞｺｸー

クローキング

「何………」

言ってるの？

意味が分からない……

『烏もヒトと同じように婚姻の契りを交わし、死ぬまで一生添い遂げるんだ。
その相手を千波に選んだのだ。』

「やっ…嫌です………」

『私と添い遂げれば不自由なく暮らせる。それに…』

「あたしは自分の家に帰りたい…」

クローの言葉を遮り、自分の意思を伝える。

「こんな見ず知らずの場所にずっとなんて居られない……」

『大丈夫、直ぐに慣れるさ。』

慣れるわけ…

コンコンッー…

話の途中でノック音が聞こえた。

『失礼いたします。』

先程のアガタが食器運びのトレーに乗せて食事を持ってきたようだ。

『お食事をお持ち致しました。』

アガタはテーブルに暖かくて美味しそうな食事やフルーツを並べた。

『取り合えず食事にしよう。クイーンの身体に大事があってはいけない。さぁ座って。』

クローは私を立たせると椅子に座らせる。

『お腹空いただろう？遠慮なく食べるがいい。』

朝から何も食べていない私のお腹は匂いをかいだだけで‘ぐぅ…’と鳴る。

食べたい…

でも食べたらこのヒト達の言うことを聞かねばならないのだろうか…

それに…

「こんなに食事があるなら…みんなに分けてあげたらどうです？」

私だけ食べるというのは気が退ける。