烏ヶ國ーｶﾗｽｶﾞｺｸー

クローキング

「それはっ…」

出来れば黙っていたい…

私だけお腹一杯になって、皆はお腹を空かせているのに…。

だけど黙っていれば分からない？

言ったことにすれば……

そう考えているとクローは笑い出す。

『クックックッ…ではその約束通りとして、千波を皆の所へ返してあげよう。』

私はまだ返事をしていない。

だけれどもクローが返してくれると言うのだ。

ここは黙って頷くしかない。

『アガタ。』

クローが名を呼ぶと何処からともなくアガタが戻ってきた。

『はい、クロー様。』

頭を垂れながら返事をするアガタ。

『千波を１度皆の元へ返してやりなさい。』

『かしこまりました。』

そう言うとアガタは私を抱き抱えクローの部屋から出ていった。

『ちょっ…ここ…どこなの？』

廊下は薄暗く、寧ろクローの部屋から離れれば離れる程辺りは黒に染まっていく。

私は怖くなって目を閉じた。

『それでは戻ります。…千波様。』

そう言うとアガタの後ろからバサッと羽根が広がるような音が聞こえ風の当たりが強くなってきた。

さっきと同じ…

風が強くて目を開けようにも開けられない。

しばらくすると眩しい光が差し込んだ。