烏ヶ國ーｶﾗｽｶﾞｺｸー

クローキング

『ちーちゃん…それ嘘だよね？さっきのあいつにそう言えって言われたんだよね？』

亜紀ちゃんが眉間にシワを寄せながら私に詰め寄る。

「えっ…なに？」

私には意味が分からず聞き返す。

『あのご飯まだ手付けてねーんだよ。腹へってんならお前食ってもいいぞ。』

今度は小林さん。

彼もまた先程とは違い私を睨み付けるように言う。

「あの…でも私は大丈夫です。まだお腹空いている方がいたら……」

私がそう言った時だった。

バンッ！！！

その音に身体がビクッと反応する。

『あら…じゃあ何、やっぱりご飯食べてきたってこと？……自分だけ？』

自分だけ？……とは。

奈津子さんを見つめ返すが何も言わない。

皆が私を睨み付ける。

『ちーちゃん…私たち、本当はご飯なんて食べていないの。さっき、ちーちゃんを連れて帰ってきたあいつに言われたの。『皆は食事をしたと言え』って。』

亜紀ちゃんが私を不信な目で見る。

「じゃあ…」

お腹が満たされているのは私だけ…？

『お前…よくあんな化け物に付いていく気になったな。本当はお前向こう側の人間なんじゃねーの？』

小林さんが私にそう言い放つ。

「そんなわけっ……！！」

『だって私たちに食事がないのは分かっていたのにあなたはのうのうと一人だけ食べてきたっていう事でしょう？』

奈津子さんが冷ややかな目で私を見る。