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「なみちゃん、聞いておくれよ」 「はいはい。どうしたんですか?」 顔に合わない弱弱しい声で私の名を呼ぶ鬼は、つらつらと上司の愚痴を零す。 まるで人間のようだと少し笑う。 言葉に一喜一憂し、笑い、泣き、喜び、怒る。 喜怒哀楽を素直に出す彼らは、人間よりよっぽど人間らしいのではないか。 「ああ、もう時間だ。また来るね」 「はい、お待ちしております」 人間より人間らしい鬼は人間を罰するために金棒を担いでいく。 扉を開けて出ていく世界は今日も、 人間らしい魑魅魍魎で溢れている。
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