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私がここへお世話になったのは、数か月前に遡る。 それ以前の記憶は無い。 所謂、記憶喪失というやつだった。 私を拾ってくれたのはトキさんで、そのまま女将に掛け合ってくれた。 そしてここ、中宿 よもつひらさかに住まわせてもらうことになったのである。 住まわせて貰うだけでは申し訳ないと言った所、それならお客さんの話し相手になれと看板娘という立場を貰えた。 ぶっちゃけ荷が重い。 そんなに美人でもないし、ましてや話が続くのかどうか。 不安が募っていたが、いろんな人の助けがあり、今では難なくこなせるようになっていた。 どれもこれも全てはトキさんのお蔭で。 だから恋心を抱くのも、乙女として当然の成り行きだと私は思う。
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