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目を覚ましたのは、微かな話し声が聞こえたから。
ありがとうね、.....くん。
いえ、いいんですよ。だって幼馴染みだし。
本当にあなたがいてよかったわぁ。それにしても奏ったら、体調が悪いなら言ってくれればよかったのに。
まあ熱中症かもしれないですからね。じゃあ、俺はこれで。
あら、もう行くの?もう少しゆっくりしてってもいいのに。
いえ、すいません。これから塾なんで。
あらそうなの。頑張ってね。
ありがとうございます。じゃあ。
ええ。気をつけてね。
玄関の開く音がして、声は途切れた。
ああそうだ。彼は幼馴染みか。
今頃になってやっと思い出した。
冷たい風がふわりとカーテンを揺らした。
丁度太陽は真上にあるらしい。部屋の中が、なんとなく暗く感じる。
どこかの家から笑い声がする。ああ、ピアノの音も。
弾いてみたいと一度は思ったけれど、家庭の都合で断念したのだっけ。
もう一度目を瞑る。
これは私だ。私の記憶だ。
私は確かにここにいるんだ。
一瞬の、あの違和感はただの勘違いだ。
がちゃりとドアが開いた。
「かなで、大丈夫?もう起きられる?」
「もう大丈夫だよ、お母さん」
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